GaNのアクセプタ濃度

【p型GaNの現状】
 GaNは青色LEDに使われる材料ですが、良質なp型を得るのは今でも難しいです。低いアクセプタ濃度は、コンタクト抵抗を高めてしまい、結果、LEDの立ち上がり電圧も高くなって、発光効率を低下させてしまいます。最近では、分極を使ったトンネル接合による、p型コンタクト抵抗の低減などが進められています(正孔をトンネルさせることで、コンタクトがn型で良くなるというメリットがある半面、高品質InGaN層の挿入が難しい、工程が複雑になるというデメリットもあります)。
 GaNには、アクセプタとしてMgが用いられ、10^20cm-3ドープすることで、p型オーミック性接触が得られます。しかし、高濃度ドープすると、V字型の欠陥が発生したり、極性が反転すると言う問題が生じ、デバイス特性を劣化させます。結果として、実は高濃度のMgをドープしていても、高濃度アクセプタは得られていないのです(Siなどの教科書を読むと???となる話ですが)。まぁなんにせよ、低いアクセプタ濃度がp型コンタクト抵抗が高い要因なのです。

【MgドープGaNの成長方法】
 主に化学気相成長(MOCVD)法と分子線エピタキシ(MBE)法の二通りあります。MgドープGaNをMOVPE成長すると、キャリアガスの水素とMgが結合するため、成長後に高温で活性化処理する必要があります。一方、MBEで成長すると、N*プラズマであろうがNH3ガスであろうが、活性化処理せずに、高い正孔濃度が得られます。試料を高温処理させたくないときに優位な成長方法と言えます。

【高濃度アクセプタを得る方法】
 アクセプタ濃度を高くするには、Mgを高効率にGaN層のGaサイトに取り込ませるだけでなく、補償要因の窒素空孔を極力減らす必要があります。窒素空孔を減らすには、MOCVD法では基本的に窒素過剰条件で成長するので問題ありませんが、MBE法においては、Ga過剰条件で成長するN*プラズマよりも、窒素過剰条件で成長できるNH3の方が優位かもしれません。

【アクセプタ濃度の求め方】
 求める方法として、主に容量ー電圧特性とホール効果測定があります。p型GaN(Mgドープ)のホール効果測定を行う際、ホール正孔濃度の温度依存性を調べることで、アクセプタ密度NaとMgの活性化エネルギを見積もることができます。GaN成長時には、一般的に窒素空孔形成によるunintentionalなn型ドーパントNdが生成し、そのNdによって低温時のグラフの傾斜が大きく変化します。(横軸:1000/T, 縦軸:正孔濃度)
【補足】
 練習目的:Mathematicaで実験のサポート

【参考文献】
 Nitride Semiconductor Devices, Morkoc (Wiley-VCH)

【ソース】 
(*不純物ドナー密度*)
ND := 1*10^18;
(*r=(2πmkT)^(3/2)/h^3*)
(*正孔濃度s=0.5(r*Nd)((1+√4r(Na-Nd)/(r+Nd)^2)))*)

r[x_] := 1/2*(2*Pi*2*9.11*10^-31*1.38*10^-23*x)^(3/2)/(6.6*10^-34)^3*10^-6*
Exp[-0.18*1.6*10^-19/(1.38*10^-23*x)];
s[T_] := 1/2*(r[T] + ND)*(Sqrt[1 + 4*r[T]*(2*10^18 - ND)/(r[T] + ND)^2] - 1);

(*グラフ*)
LogPlot[{s[1000/x]}, {x, 0.1, 10}, PlotRange -> {10^2, 10^20}, GridLines -> Automatic]