フォトマスクの作製方法

フォトリソグラフィ

マスクデザインを描くのに、CADを使います。CADソフトは充実しており、フォトマスク用フリーソフトとしては、ClewinとLayoutEditorが便利です。

図1: ホールパターン
【ホール測定用のパターン例】
図1では、電極をつける場所(緑色)と試料の電流を流す場所(赤線)の2つの構造が重なって描かれています。赤線で囲われた以外の場所を掘ることで、電流の通り道を制限しています。

試料の電気的特性(シート抵抗やコンタクト抵抗)を調べる場合は、図1の左上にあるTLMパターンも一緒にあると測定データの信頼性が上がります。

アライメントがずれないように、図2のようなマーカーをつけておくと便利です。パターンが作成できたら、拡張子gdsファイルで保存します。

試料サイズが数cmと小さい場合、一つのマスク(10cm四方)の2箇所にそれぞれ2つのパターン(3cm四方)を作製してしまうことで、フォトマスクの発注代を抑えることができます。フォトリソグラフィ同様に手軽・短時間で、マスク不要(加工精度は1um程度)である、レーザー描画装置があります。
図2: マーカー

【自分でフォトマスクを作る場合】
 1.ガラス基板上にCrを100nm程度蒸着
 2.レジスト塗布
 3.上記gdsファイルを使ってレーザー描画装置で露光
 4.現像
 5.Crエッチャントに1分程度浸す
 6.レジスト除去
レーザー描画と5が、保障制度に大きく影響します。

【外部に発注する場合】
様々な企業(大日本印刷凸版印刷Advanceなど)があり、それぞれ価格(5-10万円)と納入時期(~1週間)、保障精度(~1um)が異なります。

【デバイスパターンの一例】
GaN-HEMT、MOSFET、SBD、LED、VCSEL、ホールパターン、TLMなどのマスクパターンを載せておきます。下記デザインのgdsファイルはココからダウンロードできます。いろいろ改良してみてください。


図3: 様々なデバイスパターン


電子線描画リソグラフィ

フォトリソグラフィのほうが簡便ですが、まだ精度は数百nm程度です。電子線描画リソグラフィを使えば、10nm程度のパターンが作れます。電子線描画リソグラフィはマスクが不要なので、毎回違ったパターンを試せます。弱点は、試料サイズやマスクエリアが大きいと描画に数時間かかることです。大量生産には不向きです。

【実験準備】
1.アルコール洗浄した基板上に、ポリメチルメタクリラートを塗布(レジスト)
2.180度で5分程度加熱
3.高抵抗基板を使うときは、表面にAuまたはCrを10nm程度蒸着
 (表面チャージによる描画精度低下を低減するため)
4.上記のマスクパターンを作製

【電子線描画】
・仕組み自体はSEMに近しい。描画速度は1cm角で数十分(パターン密度による)
・マスクパターンの十字マーカの中心位置に点をつけておくとアライメント時に便利
・マーカーは両端に最低2つ
・フォーカスをしっかりとあわせこむ

【リフトオフ】
1.AuまたはCrをエッチャントで溶かす
2.メチルイソブチルケトンとアイソプロパノールを1:3で混合し、1分半浸す
3.酸化膜や電極などを蒸着もしくはエッチング後、アセトンでレジスト剥離