新材料で電子デバイス動作

【はじめに】
新しい材料で電子デバイス動作させるのはとても大変です。まずは結晶成長の仕事です。高品質の単結晶膜を作り、不純物ドーピングによるn型やp型化ができて漸く、デバイス側の仕事になります。

・まずはどんな電子デバイスを作ればいい?
図1: MESFETのデバイスパターン例
 オーミック性接触電極やショットキー電極を調べた後は、ダイオードならショットキーバリアダイオード(SBD)、電界効果トランジスタならMESFETがお勧めです。ソースとドレインにオーミック性電極、ゲートにショットキー電極をつけ、図1にように、漏れ電流を制限するために周囲をメサ加工するだけです。円形のパターンを用いればメサ加工も不要です。

・MESFET構造の最適化
図2: GaN MESFETの構造
 MESFETは、半絶縁性(無ドープ)の下地層とチャネル層さえあれば作れます。GaN MESFETの構造例を図2に示します。結晶性が優れているほど、高いドレイン電流が得られます。ドーピング濃度や表面荒れもデバイス特性に大きく影響してきます。
 MESFETのチャネル層では、低濃度ドープの方が移動度が高く高周波特性に優れますが、ソースおよびドレイン電極の接触抵抗が高くなります。ソース・ドレイン電極下にイオン注入による選択ドーピングや、高濃度コンタクト層を再成長することで接触抵抗を低減できます。チャネルの膜厚が厚すぎるとゲート電極下の空乏層が広がりきる(ドレイン電流がoff状態になる)までに時間を要し、高周波特性で不利です。ゲート電極幅を短くした方が高周波特性に良く、ゲート・ドレイン間を離した方が高耐圧特性に良いです。目的に応じて、デバイス構造を最適化してみてください。


【GaN MESFET特性】
・Id-Vd特性(静特性)
 ゲートに負の電圧をかけるとチャネル層内に空乏層が広がり、電流の通り道が制限されて、ソースからドレインに到達する電流が低下します。図3のように、MESFETは、ゲート電圧の小さい変化(-10V~0V)で、ドレイン電流を大きく変えられる(0~200mA/mm)ので、増幅器として使えます。より小さいゲート電圧変化でドレイン電流を大きく変化させるには、どのようなデバイス構造にすればいいでしょうか?図2とにらめっこしてみてください。
 
・回路
 回路例としては、図4のように使えるわけですが、ゲートに電圧をかけない状態でもドレイン電流がダダ漏れ状態(ノーマリーオン動作)なので、MESFETは安全性から使い難いという面があります。というわけで、MESFETが動作すれば、次にMOSFET動作を目指します。MOSFETはn型とp型の両方が必要なので、新規材料にとってMESFETとMOSFETの間には大きな障壁があります。
図4: MESFETを使った回路図

図3: Id-Vd特性