VCSELの作製

【デバイス設計】

 VCSELやフォトニック結晶用の良いフリーソフトがない(現在探索中)ので、お金がない場合はMATLABやVBAで計算するのがいいかも。最適化するのにパラーメータを何度も振りなおす必要があるので、ソフトを使ったほうがらくだが、計算自体は手計算でも可能(DBRの計算はココを参照)。
 VCSELのデバイス構造の計算に必要なのは、主にbottom DBR、cavity、top DBRの三つのみ。中でも最も重要なのがcavity長。VCSELで出したいレーザーの波長を設定し、事前にしっかりと計算する必要がある。光閉じ込めを高めるにはなるべく実効cavity長は短いほうがいいが、窒化物では1um(7λ)以上の実効cavity長が好まれる。薄いと熱によりデバイスが壊れやすいらしい。また、光閉じ込めの観点から、活性層(特に井戸層)はなるべく厚いほうがいいが、キャリア注入の観点からは薄いほうが良いため、全体の厚さ20-30nm位が良く使われる。
 構造計算時の一例を挙げておく。所望の波長において、DBR/GaN界面で電界が最大になるようにcavity長を設定→高い正孔濃度と低いコンタクト抵抗を得るのに十分なp層膜厚を設定(EBLも挿入)→光閉じ込めを大きくするため、活性層の井戸で電界が最大になるように、n型層の膜厚を調整。

【作製準備】

1.基板の購入
基板の透過率、反射率を測定し、吸収率を求める。GaN基板は30%くらいの吸収がある。
2.活性層中のIn組成を調整
LED構造を積層し、In組成を調整する。波長はPLで測定すればよい。
3.電流注入による波長位置を確認
LEDを作製し、電気的なキャリア注入を行う。レーザー発振はLEDよりも少し高い電圧が必要なので、波長シフトを考慮する。LEDの作り方はコチラ

【VCSEL作製手順】

1.bottom DBRの作製
bottom DBRを作製し、透過率、反射率を調べる。材料のreflective indexが分かっていれば、DBRの構造(膜厚と周期)をあらかじめ計算できる。窒化物系で99%以上の反射率を得るには、40層程度の積層が必要。MOCVDで丸一日に近かる。窒化物系DBRは非常に高抵抗なので、bottomにn型電極をつけるのは難しい。AlN系では酸化しやすいので、一旦試料を取り出す場合はbottom DBRの最表面をGaNで終端させたほうが良い。
2.cavityの作製
n型キャリア層、MQW活性層、p型EBL、p型キャリア層を積層する。この膜厚が、所望の波長で全反射するようにする。1nm膜厚が異なるだけで、波長が数nmずれる。これは、窒化物系ではbottom DBRの窓の波長域が数十nmしかないため、大きな問題になる。積層後にp型層をエッチングするとダメージによる光吸収、高抵抗化が懸念される。
3.top DBRの作製
誘電体が使われることが多い。電気を流さないが、数層で99%の反射率が得られる。両面研磨サファイヤ基板を使って事前に吸収率を求める。SiO2, TiO2はHFで剥がせるので、やり直しが利く。Ta2O5はwet etchingが難しい。
4.デバイス作製
口径は8~12umがベスト。4umは熱により壊れやすい。20umは高い電流密度が難しい。ITO、プラズマやイオン注入によるダメージ、トンネル接合、InAlN層の酸化など、様々な方法で電流狭窄が行われる。