イオン注入のシミュレーション

SRIMというソフトをダウンロードし、インストールします。無料です。
  1. ダウンロードした"SRIM-2013.e"のファイル名を"SRIM-2013.exe"に書き換える
  2. SRIM-2013.exeを実行して、ファイルを展開する。

イオン注入原子の深さ方向プロファイルを調べるには、main menuで、TRIM calculationをクリックします。
  • 画面が乱れる場合は、画面を最小化(ウィンドウズ+d)する
  • MSVBvm50についてのエラーが出る場合は、SRIM-setupファイルにあるMSVBvm50.exeを実行する

1umのSiC中にAlイオンを注入する場合を例にします。今回、計算に使う注入イオン数は1000、80 keVで打ち込みます。

【設定項目】(自由に変更してください)
  • DAMAGE: "Detailed Calculation with full Damage Cascades"を選択
  • Basic Plots: "No Graphic"を選択
  • ION DATA: "PT"をクリックして"Al"を選択、Ion energyを80 keVに設定。
  • TARGET layers: Layer name: SiC, Width: 10000A(注入するSiCの厚さ)
  • Input elements to Layer: SiCのlayerに対して、"PT"から"Si"と"C"の二つを選択(Atom stoichはそれぞれ1)。表面酸化膜を想定する場合は、SiO2のlayerに対して材料と厚さを設定。
  • Special parameter: Total number of Ionsを1000、Random number seed(初期値)を0または空白、plotting window depthsを0と10000(=膜厚)
  • Output disk files: ion rangesにチェック
を行ったら、Save input & run TRIMをクリックします。

この時にエラーが出る場合があります。少し面倒なセットアップが必要です。詳細は"SRIM SETUP MESSAGE"ファイルに書かれています。4つの方法が書かれており、私の場合4つ目の方法で上手く行きましたので、その日本語を簡単に書いておきます。
  1. Windowsのシステムが32bitか64 bitかを確認する
  2. "srim-software"ファイルにある、"SRIM-setup"を開く
  3. "COMCTL32.ocx"、"COMDLG32.ocx"、"MSFLXGRD.ocx"、"RICHTX32.ocx"、"TABCTL32.ocx"の5つのファイルを、"C"ドライブの中の"Windows"ファイルの中の"System32"ファイル(32bitの場合)または"SysWOW64"ファイル(64bitの場合)に移します。上書きはしないように。
  4. アクセサリからコマンドプロプトを開き、C:Windows\System32\regsvr32.exe RICHTX32.OCX(32bitの場合)またはC:Windows\SysWOW64\regsvr32.exe RICHTX32.OCX(32bitの場合)と打ち込んで実行。他のファイルも同様。
  5. 成功しましたと出れば、SRIMソフトが問題なく使える。0x8002801cエラーが出た場合は、コマンドプロンプトを右クリックし、管理者として実行を選択。
他にもエラー対策が書かれているので、SETUPファイルを参考にしてみてください。


  • Ion/Recoils (XY)にチェックを入れると、注入したイオンの分布図がリアルタイムで見れる
  • Ion distributionにチェックを入れると、注入したイオンの深さ方向のグラフが表示される。縦軸は、(atom/cm3)/(atom/cm2)なので、ドーズ量が10^15で、縦軸が2x10^4のとき、注入されるイオン原子は2x10^19cm-3となる。
  • Ion/Recoil distributionの欄にある"F"をクリックすると、"SRIM output"ファイルに深さ方向分布が保存される。
詳しい使い方はSRIMHELPファイルを参考にしてください。


後は同様にして、10keV、30keV、120keV、180keVでデータを取得し(左図)、それぞれに定数をかけてあげれば、ボックスプロファイルが完成します(右図)。イオン注入を外注する前に試してみてください。実際は、イオンの入射角度が試料に垂直の場合、チャネル効果により試料の奥深くにまで入ってしまうことがあり、7度程度の傾斜をつけることが多いです。また、イオン注入の損傷回復のために一般的にアニール処理を行いますが、不純物によっては熱で拡散してしまうため、想定とは違う濃度分布になることがあります。実際の不純物濃度分布は、SIMS測定により調べられます。

イオン注入を外部委託(6インチサイズ一回10万円程度)する際は、『基本料金+試料数+注入条件』で換算されることが多いです。具体的には、10keV以下や200keV以上だったり、試料サイズが6インチを超えたり、高温条件でイオン注入したり(注入損傷の抑制)、注入角度を変えたりする(チャンネリング効果の抑制)と、追加料金が発生することがあります。また、「A条件で試す→調べる→B条件→調べる・・・」よりも、「A・B・C条件をとりあえず試す→調べる」としたほうが安くなりことがあります。試したい注入条件が多い際は、ロットを一定時間貸切るという交渉方法もあります。業者の方と相談してみてください。