MOCVD法によるGaNおよびGa2O3成長

【GaN成長の原料供給V/III比の計算】
標準状態(1(Atom), 273K)
流量1 sccm= 1*10^-3 l/min
p(Atom)*V(sccm)/22.4=n (mol/min)

飽和蒸気圧
 TMA: Log (p*760)=10.48-2780/T(K)
 TMG: Log (p*760)=8.5-1825/T(K)
 TEG: Log (p*760)=9.19-2530/T(K)
 Cp2Mg: Log (p*760)=10.56-3556/T(K)

(例①)TMG 20℃, 15 sccm
 0.013*0.015/22.4=8.7 umol/min

(例②)TMA 20℃, 15 sccm
 0.0035*0.015/22.4=2.4 umol/min

(例③)例①のTMGと例②TMAに対するNH3, 1 slmのV/III比
  (1/22.4) /((8.7+2.4)*10^-6)=4000


【GaN中のSiドーピング濃度】
(例④)窒素ガス希釈モノメチルシラン100 ppm, 1 sccm
   100*10^-6*0.001/22.4=0.005 umol/min (?)
   装置によって異なりますが、TMGから見積もった流量0.1 umol/minに対して1*10^19 cm-3の関係がある場合、一般的にドーピング量が流量に比例するので、5*10^17 cm-3のSi濃度になります。窒素流量が高く、成長温度が高いと、シランガスの燃焼反応が大きくなり、ドーピング効率が低下する可能性があります。

幅広くドーピング量を制御するには、希釈が小さめのモノメチルシランガス(大陽日酸、トリケミカル研究所)を用意し、MFCを追加したダブルダイリューション構造を用いるのが良いです。ベントは、自動装置であれば圧力コントローラーを用います。


【Ga2O3成長】
 酸化ガリウムの場合、TMGと酸素との反応が激しく、TMGよりもTEGがよく用いられます。TEGの方が、炭素や水素不純物も入りにくいです。しかし、TEGの方が高価であり、低速成長になることから、最近では、ホットウォール型でTMGを用いる例も増えてきました。今のところ、酸化アルミニウムにはTMAを用いているようです。
 酸素はIII族原料と反応しやすく、気相成長が起きやすいです。原料を効率よく供給しないと膜が着かない為、酸素とIII族原料のラインを分け、近接シャワーヘッドが用いられます。しかし、サセプタと反応炉の距離が近くなるために、高温で成長速度の低下がみられる場合があります。そのため、100 Torr以下の減圧条件で行う場合が多いです。キャリアガスにはArや窒素が用いられます。サファイア基板上では、600℃程度ではα型のGa2O3が、800℃程度ではβ型のGa2O3が成長しやすいです。酸素を用いるので、サセプタ劣化の懸念から、酸化アルミニウムでも成長温度は1000度以下が主流です。