宇宙部品には、放射線と振動の耐性が求められます。中でも、半導体素子にとっては、放射線耐性が重要となります。宇宙部品の中でも、日本では主に衛星用部品が対象であり、陽子や電子、重粒子への曝露環境にあります。放射線照射による半導体素子の故障要因として、下記の3つがあります。
- 陽子線や電子線、中性子線照射により、半導体材料に多数の欠陥が発生する(はじき出し損傷効果: DDD)
- 多量のγ線やX線照射により、MOSFETの酸化膜に多量の電荷が蓄積し、しきい値がシフトする(トータルドーズ:TID)
- 1個の重粒子線照射により、多量の電子正孔対が生成され、メモリの誤動作や素子の破壊が生じる(シングルイベント:SEE)
ワイドギャップ半導体は、原子間結合が強いためDDD耐性があり、バンドギャップエネルギーが大きいためSEE耐性があると言われています。また、SiCやGa2O3を用いたMOSFETでは、理由は不明ですが、Si MOSFETよりもTID耐性があるようです。つまり、総じて、ワイドヤップ半導体は放射線耐性に優れていると言えます。衛星用部品の基準として、DDDとしては10 kGy以上の吸収線量、SEEとしては30 J/m以上の線エネルギー付与(LET)が求められます。
実際に放射線耐性を調べるにはどうしたらいいでしょうか?陽子線は東北大CYRICで、γ線は高崎で、SEEは理研RIBFで照射することができます。LETはSRIMで計算可能です。SRIMでの計算方法を記載しておきます。
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