新材料で光学デバイス動作

【はじめに】
新しい材料で光学デバイスを動作させるのは電子デバイスよりも更に大変です。高品質の単結晶成長は基より、不純物ドーピングによるn型とp型化の両方ができて漸く、デバイス側の仕事になります。デバイスプロセスは、むしろ電子デバイスよりも簡単です。光学デバイスでは、結晶成長が大きな鍵と言えます。
図1: LEDのデバイスパターン例

・まずはどんな構造を作ればいい?
n型およびp型オーミック性接触電極が得られれば、LEDを作ることができます。基板側から光を取り出す場合のLEDのデバイスパターンは、図1左のように、単純な円形パターンで作れます。表面側から取り出す場合は、p型電極を極限まで薄くする、円形の端のみ電極をつける(図1右)、などの工夫が必要となります。
図2: GaN LEDのデバイス構造

・LED構造の最適化
LEDは、p型層とn型層さえあれば作れます。発光層として、多重量子井戸(MQW)構造を設けた方がより強い発光強度が得られますが、新材料の初動作を目指す場合は不要でしょう。基板側から光を取り出すGaN LEDの構造例を図2に示します。
 結晶欠陥が非発光再結合中心となるため、結晶性が優れているほど、より光ります。より高いキャリア濃度注入を得るため、電極の接触抵抗低減などの電気的特性の向上も必要となります。p型電極の方が接触抵抗が高いので、一般的に上側にもってきます。


【簡易確認】
 プロセス前の確認方法として、フォトルミネッセンス(PL)で発光波長を調べるのが一つです。温度特性や励起強度依存性を調べるだけでも、多くの情報が得られます。
 電流注入の場合でも、LEDデバイスのフルプロセス(電極蒸着やメサ加工)を行わずに発光が可能かどうかを簡便に確認できます。LED構造を結晶成長したら、試料表面に球状のInを半田で垂らし(p型電極)、後は少し削った試料端にInを塗る(n型電極)だけで、電圧をかければ発光させられます。実際のGaN/InGaN MQW層は、試料面内でIn組成分布の均一性が問題となります。In組成が異なると当然発光波長がずれてしまいます。p型電極を試料全面に点々とつければ、試料中心部と端部での波長域の違いを調べることができます。


【LEDの特性】
・電気的特性
 一般的なpn接合と同様、I-V特性において、順方向特性の立ち上がり電圧と、逆方向特性の漏れ電流を調べます。漏れ電流が大きい、立ち上がり電圧が大きい場合、図2の構造のどこを改良したらいいか、考えてみてください。LEDだけでなくPiNダイオードの論文を読むのもいいかもしれません。

・光学特性
 発光出力や発光効率(外部量子効率: EQE)を調べます。

以上のように、LEDのプロセス自体は難しくありませんが、高い発光強度と吸収率の低下について突き詰めるとかなり深いです。また、光学デバイスの中でも、レーザー(LD)や面発光レーザー(VCSEL)は、光をcavity内に閉じ込める必要があり、プロセスが急激に難しくなります。特に電流注入は難しいです。