単結晶酸化ガリウム(Ga2O3)は、京都大学で初めて作製され、その後、2012年にNICTにより初めて電子デバイス動作が報告された。サファイヤ同様、融液成長によりバルク作製できるので、パワーデバイスの低価格化が期待されている(SiCやGaN基板は、高温・高圧環境が必要であるため、価格が高止まりしている)。
【デバイス設計・結晶成長】
Ga2O3は様々な結晶構造を持ち、一般的にαとβ構造が用いられる。準安定であるα構造Ga2O3は、サファイヤ基板上にミストCVD法により作られる。低温・簡便・低コストが特徴である。しかし、熱的に不安定であるため、イオン注入技術が使いにくい。一方、β構造は熱的に最も安定であり、バンドギャップは~4.8 eVある。イオン注入+高温熱処理により電気伝導性が得られる。β構造は、結晶成長速度の遅いへき開面を多数持つ。実用性の観点で、MBEで用いられるのは(010)面のみで、他の面はHVPEやMOCVDが使われる。一方で、へき開面ウエハは大面積化が可能であるため、(001)では4インチウエハ、(-201)では2インチウエハが既に市販されている。例えば、縦型パワーデバイスでは、(001)面を用いてHVPE法により10um積んで作るのが主流。現状の(-201)では、ツインと呼ばれる積層欠陥が発生するらしい。
n型のドーパントは、Si、Sn、Geがある。MBE成長では、金属原料で不純物添加すると濃度制御が難しいため、酸化物原料がよく用いられる。イオン注入にはSiが用いられる。p型ドーピングは不可能であり、CuOなどの異種材料とのPN接合が用いられることがある。高抵抗層であれば、Mgや窒素イオン注入により作製可能。n型基板はSn、高抵抗基板はFeがよく用いられる。Feは熱処理時に偏析が生じ、隣接するn層まで高抵抗化させてしまうことに注意。イオン注入後のアニールは1000度程度で十分であり、基本的にすべてのプロセスはSi用プロセス装置で可能である。ワイドギャップ半導体としては珍しい。
MBE成長では、酸素プラズマとオゾンを用いる方法がある。オゾンの方が成長速度は速い。成長は比較的容易であり、500-800度の間で良質の結晶成長が可能。表面平坦性の観点では、600度前後の酸素過剰条件を用いるのが主流。低温Ga過剰条件では、Ga2Oが形成してエッチングが進み、成長速度の低下要因となる。HVPE成長では数um/hが可能である。実効ドナー濃度は、研究レベルでは10^14 cm-3まで低減可能であるが、今のところ10^16 cm-3程度が市販されている。縦型デバイスを作るならHVPEで十分。ヘテロエピや薄膜の不純物濃度制御をするならCVD法が良い。ただ、MOCVD成長は、米国のみで行われており、日本では報告がない。
【作製手順】
1. 試料洗浄:アセトン & IPA
2. 酸化膜堆積:1um SiO2 by PECVD
3. リソ
4. 酸化膜除去:HF
5. レジスト除去:アセトン
6. イオン注入:Si、7度入射、5e14 cm-2
7. 損傷回復アニール:酸素雰囲気1000度30分
8. ソースードレイン電極用リソ
9. 表面清浄化(適宜):塩素系プラズマ
10. オーミック電極の蒸着:Ti/Au(20/50nm)
11. リフトオフ
12. RTA:窒素雰囲気450-550度30秒
13. 酸化膜堆積:20 nm SiO2 by PECVD
14. リソ
15. 酸化膜除去:HF
16. レジスト除去
17. ゲート電極用リソ
18. ゲート電極の蒸着: Ni (50 nm)
19. リフトオフ
縦型デバイスの時は、試料裏面でオーミックを取るのにCMP処理を行う。Ga2O3のCMP処理条件はAl2O3と同じでよい。コンタクト層はエピで不純物添加しなくても、Siイオン注入で10-6Ωcm-2の接触抵抗が得られる。
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