共鳴トンネルダイオード

室温で動作するテラヘルツデバイスとして、共鳴トンネルダイオードがあります。

原理としては、ヘテロ接合を用いて、人工的に井戸型ポテンシャルを作り、量子効果を利用してポテンシャルの低い井戸層にキャリアを閉じ込めます。ここにバイアスをかけると、下図のように負性抵抗が生じ、インダクタンスと直列接続するだけで高周波発信回路が作れます。


AlN/GaN/AlN構造を用いた共鳴トンネルダイオードの論文の多くが、電流電圧特性の再現性が低いという問題を抱えていました。原因は、結晶性が悪く、キャリアトラップにより負性抵抗が発生していたためです。温度特性変化やデバイスサイズ依存性、測定スキャンスピード変化などを確かめないと、デバイスが動作しているとは言えません。最近は、GaN基板を使うことで、負性抵抗の高い再現性が得られるようになっています。


AlGaAsとGaAsの伝導帯Ecのエネルギー差V=0.1 eV、井戸層の厚さw=2 nm、障壁層の厚さl=10 nm、有効質量を0.067m0として、トンネル確率を計算してみます。


GaAs/AlGaAsの2重ポテンシャル障壁のトンネル確率を計算したのが上図です。縦軸がトンネル確率で、横軸がポテンシャルエネルギーです。エミッタ層の電子がE1=25 meV付近のポテンシャルを持った時、高いトンネル確率が得られる、つまり、~0.05 Vのバイアス時に負性抵抗が得られそうです。


v = 0.1;(*井戸のポテンシャル高さ*)
l = 10*10^-9; (*障壁層の厚さ*)
w = 2*10^-9; (*井戸層の厚さ*)

(*障壁層の波数*)  
kb[x_] := Sqrt[2*0.067*9.1*10^-31*(v - x)*1.6*10^-19]/(6.63*10^-34/(2 Pi));

(*井戸層の波数*)
kw[x_] := Sqrt[2*0.067*9.1*10^-31*x*1.6*10^-19]/(6.63*10^-34/(2 Pi));

(*反射確率*)
R[x_] := v^2*Sinh[kb[x]*l]^2/(v^2*Sinh[kb[x]*l]^2 + 4*x*(v - x));
t[x_] := ArcTan[2*kb[x]*kw[x]/((kw[x])^2 - (kb[x])^2)*Cosh[kb[x]*l] / Sinh[kb[x]*l]];

(*トンネル確率のプロット*)
LogPlot[(1 + 4*R[x]/(1 - R[x])^2*Sin[kw[x]*w - t[x]]^2)^-1, {x, 0, v}]

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